アシュタサポテ :: 過去の日記 :: 2000-02

日記 :: 2000-02


2000-02-22

『ちょ~イタ ~素晴らしき超能力人生~』('99 Liar Soft)

 傑作だ。素晴らしい。明確なコンセプトに基づいた見事なシナリオと斬新なシステム、美麗なグラフィック、正確なギャグセンス、全てが絡み合って余裕で100点合格。エロゲーの未来について多少なりとも思うところのある人間なら、何としてでもこれをやらねばならない。ちなみに僕は特に思うところはない。

 超能力でイタズラするからちょ~イタ、という訳で物語は主人公が交通事故に遭い超能力が身に付いたというまあアリガチな始まり方をする。相手の考えが逐一読み取れる他に、透視もできるため女の裸も見放題である(もちろん男の裸も見られるのだが、これはまあ、無理して見なくてもいいよね……)。具体的に言うと全てのシーンで画面右上に「透視」というボタンが出ていて、これをクリックするとマウスポインタを合わせた部分が透視できるようになるのだ。一気に全裸が見られる訳ではなくあくまでポインタの範囲内だけという辺りも、もどかしさがあってニクイ。にしても、これってつまり全ての絵を着衣と脱衣で2枚ずつ用意しているのだから、単純計算でも労力は2倍になる訳で、この男子中学生の妄想レベルの下らないアイディアを実現するためにそんな苦労をしたのかと思うとつくづく感心する。しかも絵も上手い。女の子が可愛い。いや本当。この絵かなり好きだ。由紀ちゃん可愛いってば。

 いや、由紀ってのは主人公の彼女なんですけどね。で話は由紀との初デートの一日の出来事で、初Hへの期待と不安を胸にやって来た(ことが超能力で読み取れる)彼女と取りあえずはその辺をブラブラ歩いたりする。もちろんその間も裸は見放題だ(すぐ飽きるけど)。尤もこの透視システムだけだったら、そこそこ面白い小ネタを仕込んだ佳作に留まっていただろう。この作品がまず素晴らしいのは脚本のクォリティである。主人公が一人で突っ走ってバカな行動をとり続ける「いらんことしい」であり、加えて由紀というのがまた人の言う事を全て信じてしまう実にからかい甲斐のある娘なので、主人公が常に先回りして彼女をからかうような遣り取りが延々続くのだが、こういうのは下手にやると後味の悪い話になりかねない。にも拘わらずテクストが非常によく書けているためそうはなっていない、どころか主人公の彼女に対する優しさと愛情(いやマジで)さえ感じ取れて、このシナリオライター、かなり出来る奴と見た。

 そもそも昨今のエロゲーでテクストが優れているというとまず大抵は感動的だとか泣けるという意味であり、従ってここにはエロゲーというジャンルにおける一つの制度性が見て取れる。つまりテクストを読むことを主体として進行するゲームにおいて、そのテクストの完成度を上げて行こうとするとどうしても「文学的」(これは最悪の評価を意味する)になり泣ける系になってしまうという感じで、それら泣ける系ゲームの個々の作品に対する評価は別にしても、この制度性自体は必ずしも喜ばしいものではないだろう。しかしこの『ちょ~イタ』は、高水準のテクストを備えていながら基本的な路線としてギャグに徹しているため、驚くべきことに全く泣けない。これは決定的に新しい。

 テクストの秀逸さを幾つか具体的に指摘しておこう。まず笑えるという点。選択肢が三つ出るとその内少なくとも一つは必ずギャグだ。例えば由紀が主人公を「葛西さん」と名字で呼ぶのを、彼氏彼女なんだからそろそろ下の名前で呼ぼうじゃないかと提案する。由紀は実は前々からそうしたいと思っていたので喜ぶ。その時の選択肢。

 本当にたわいのない事なのに、由紀は嬉しそうに笑った。
 そんな由紀を見ていて、俺は……
 可愛い奴だな、と思った
 理解不能だな、と思った
 つい灰皿を投げつけてみた

 投げつけるなって。

 また、ゲームを進めることでフラグが立って選択肢自体が変化してくるというシステムは最早や珍しいものではないが、このゲームでは更に透視することによって展開が変わってくる所もある。例えばそろそろお昼なので由紀とファミレスに入る。ウェイトレスが注文を取りに来る。条件反射的に「透視」をクリック。すると、ブラの中になぜかあんぱんが詰め込んである。どうやら胸パッドを忘れたため即席の詰め物として利用したらしい。そしてこれを透視しておくと次の分岐(注文する場面)で第三の選択肢が現れる。

 ハンバーグのランチにしよう
 こうやどうふはないのか?
 そのあんぱんをよこせ

 当然3つ目を選択。ウェイトレスはなぜバレたのか分からずオロオロしながらも観念してあんぱんを差し出し、かくして二人は昼食をファミレスであんぱん食って済ませるハメになるのでした。バカ?

 とまあ、こうした展開でさんざん笑わせながら、話は由紀とのデートからいつの間にか連続婦女暴行集団との対決みたいなのになってくるのだが、ここでテクストの秀逸さのもう一つの点が浮かび上がって来る。すなわち登場人物の頭の良さだ。例えば映画とかを観ていても、なんでこいつここでこんな行動をとるんだろうと登場人物のバカさ加減に苛立ってくる事は誰しもあると思うが、このゲームの主人公はかなり頭の良い奴で、まあ上述のように突拍子もないバカな行動に出ることも多いのだが、肝心な所ではいちいち理に叶ったことを考えて行動するので、プレイしていて非常に心地良い。やってると何だか自分も少し切れ者になった気がして来るのだから大したものだ。そして更に感心させられるのがレイプ集団のリーダー。こいつは別に超能力者ではないのだが、ものすごく頭が切れて勘も鋭いため、自分の考えが全て読み取られているにも拘わらず主人公と互角に渡り合ってしまう。こんな二人が対決するのだから、例えば『雫』における主人公と月島さんの電波合戦をも遥かに凌ぐエキサイティングな戦いが展開されることは容易に予想がつくだろう。

 大体エロゲーに限らずゲームにおいて戦闘を描くとなると、アクションの要素を前面に押し出すか一定のコマンドから選択する作業を繰り返すか(ちなみにこれを徹底すると「攻撃する」「逃げる」といった選択肢を選ぶだけの最もつまらない種類のAVGの戦闘シーンに堕する。例:アリスの『デアボリカ』)、あとはせいぜい後者に「戦略性」を加味する程度で、改めて考えてみるとこれは驚くべき画一性である。簡単に言うと、これらの手法ではわれわれが例えば『ジョジョの奇妙な冒険』のような少年マンガで読み慣れてきた筈の戦闘における駆け引きの面白さ、つまりSLGにおける「戦略」があくまで一定のルールの枠内での思考操作であるのに対して、戦い方そのものを与えられた状況からその都度割り出し・切り抜けるという知的な駆け引きの面白さは描き得ないのである。然るにこの『ちょ~イタ』のシナリオは、選択肢から一つ選ぶというAVGの形式は保持しつつも、まあ別にジョジョ的ではないのだがやや大袈裟に言えばそれに近いスリリングな駆け引きを演出することに成功している。この戦闘の描き方は斬新だ。つまりここでもこの作品は現在のゲームの制度性を抉り出して見せていると言えよう。

 また、一回クリアすると現れる裏シナリオも秀逸だ。主人公がレイプ集団の仲間入りをして、超能力を生かして鬼畜ライフを満喫するようになるというとんでもない話なのだが、その中で何と言っても最高なのは前述のファミレスを襲撃する場面だ。持参したあんぱんを例のウェイトレスの口に突っ込んでレイプするという愉快極まりない場面が見られるぞ。

 その他、透視時に背景画に描き込まれている隠しキャラ(宇宙人とか)から、二通りあるスタッフロールの楽しさ、そして冒頭のメーカーロゴに仕掛けられた小ネタ(初回起動時にしか見られないので要注意だ)まで、とにかく隅々まで神経の行き届いた素晴らしい仕上がりで満足度120%、まさに珠玉の名作、笑えて抜けるエロゲーの鑑のような作品だ。かくしてライアーソフトはこの第一作で僕にとって最も注目すべきブランドとなった。次作『行殺♥新選組』も今から目が離せないゾ!

 確かにこれは傑作なんだけど、ただ誉めるにつけ貶すにつけ極端に走りがちという癖は、語彙と思考の貧困を露呈させるだけだから直した方がいいと思わないか。


2000-02-16

 用語集。

 まず「エロゲー」或いは「18禁ゲーム」という言葉についてハッキリさせておきたいのだが、これはあくまでゲームを市場論的に分類するための用語に過ぎず、エロゲーというゲームのジャンルがそれ自体積極的にあると考えるべきではない。実際一口にエロゲーといってもその内実は多岐に亘っているのだから、寧ろ一般ゲームの緒ジャンルが逐一エロバージョンになってそっくりもう一組エロゲー界に存在すると考えたほうが良い。つまりAVGに対してエロAVGが、RPGに対してエロRPGが、SLGに対してエロSLGが、麻雀ゲームに対して脱衣麻雀が、育成ゲームに対して調教ものエロゲーが、そしてギャルゲーに対してエロギャルゲーがある訳だ。従って僕はこれからはそういう言い方をしようと思う。そのほうが正確である。回りくどいけど。

 次に「ギャルゲー」。この語に関しては歴史が浅いせいもあってか意味が拡散し錯綜し過ぎている気がするので、僕はちょっと特殊な定義を与えてみたい。まず、ギャル(はっきり言えば萌えキャラ)が出て来る、というか殆どそれが売りになっているゲームなら内容がRPGだろうがSLGだろうが育成だろうが一括してギャルゲーと呼んでしまうなら、『クソゲー白書』の有名な定義(可愛いキャラが出てきてライトユーザーの女の子にも人気の高いゲームをギャルゲーと言う。例:『ぷよぷよ』)とさして択ぶところがない。大体今時のゲームには、大抵可愛いキャラクター(メス)の一匹や二匹は出てくる。しかしギャルゲーという語によってしか指し示し得ない一つのジャンルが既に確実に存在している以上、そうした超ジャンル的な意味での用語法は誤解を招くだけである。では次に、もう少し狭く「恋愛を擬似体験するゲーム」と内容面から攻めてみる定義はどうだろうか。これは確かに半面正しい定義なのだが、しかしゲームシステムとしてRPGであってもAVGであっても或いはデジタルコミックであっても「恋愛を擬似体験する」内容を盛り込む事が可能である以上、やはりこれも超ジャンル的な分類として退けられねばならない。という訳で、ゲームの内容に関わりなく純粋に形式的な側面から「ギャルゲー」を弁別し得る定義をここで提案したい。すなわち、まあ有志の読者は99/10/20辺りを参看せられたいのだが、ギャルゲーを他のジャンルから際立たせる要素とは、「攻略対象となる女の子の数と同じ数だけのシナリオが同時に並行的に展開するというシステム」、この一点に尽きる。プレイヤーの意思(どのキャラにどれだけ惚れ/萌えているか)をイベントのクリア状況という形で絶えずチェックし、主人公(プレイヤーキャラクター)の行動が乖離し独り歩きすることを防ぐことで、プレイヤーが彼に感情移入し恋愛を擬似体験することを可能にするために新たに創出されたこのシステムこそ、ギャルゲーをギャルゲーたらしめる要訣なのである。そして逆に言えば、この点さえクリアしていればたとえ内容が剣と魔法と経験値の世界であってもギャルゲーなのだから、これからはそれを例えば「RPG型ギャルゲー」とでも呼ぶことにしよう。

 このように言えば、僕がギャルゲーという語で指し示しているのが、そこそこ良質の恋愛「SLG」に仕上がった『ときめきメモリアル』ではなく、東西南北どこから見ても「ギャルゲー」としか呼称しようのない『センチメンタルグラフティ』である事は明らかだろう。あのゲームについてはもう大分以前に別項で書いたから繰り返さないが、と言いつつ繰り返しになってしまうが、やはり幾つかの点で重要な問題を含んでいた。まず全12人の女の子たち(多いよな、しかし。僕は結局最後まで全員憶えられなかった)が、全国各地に分布しているため互いのことを知りさえせず、従って各シナリオが一切交差しない完全な平行線を描いているという点。大体普通に考えたら、東京在住の高校生が休日ごとに北海道から長崎までを飛びまわってデートに明け暮れるなどという気が狂ったシチュエーションは絶対に出て来ない。それが出て来た理由はただ一つ、複数シナリオの平行展開というギャルゲー特有のシステムを極限まで純化したためである。つまりキャラクターの地理的な疎隔とは、各シナリオを物理的に断絶するための手段だった訳だ。第二に、主人公が女の子との思い出を最初はすっかり忘れていて、デートを重ねるごとにそれを思い出してゆくという展開。これも子供時代の記憶を呼び出して「せつなさ」を演出することが主眼なのでは決してなくて、ギャルゲーの主人公(プレイヤーキャラクター)が初めは誰にも惚れておらず、プレイヤーの選択を反映して徐々に内面を形成してゆかねばならないというシステム上の制約を受けて導入された物語だと言うべきだろう(なお、そのうち論じようと思う『Kanon』はこの点に関するもっとすごい徹底化の事例だ)。その他、12人もいるお蔭で少なくとも'97年時点におけるギャルゲーキャラの類型をほぼ網羅したとか、純粋にゲームとして見ると限りなくクソだとか、あるいはキャラ萌えでユーザーを煽って関連商品を売る手際なども併せて、このゲームはギャルゲーというジャンルの特質を余す所なく、しかもそれぞれ最も極端な形で表現していたと言えよう。そういう意味ではこれはすぐれて徴候的な作品であり、その重要性は今でもなお減じていないと僕は思う。もう一度プレイしたいとは思わないが。

 最後に「美少女ゲーム」という言葉。これはいわゆるエロゲーと同義だと思うのだが(時に年齢制限なしのギャルゲーも含む)、どちらかと言うとエロゲー・パソゲーに古参の人たちによって使われているという印象がある。思うに、修正(モザイク)もへったくれもない性器モロ出しCGが溢れていた古き良き初期パソエロゲー(主に98)においては、しかし毛だけはヘア解禁以前のこととて描けないという制約と、ユーザーの揺るがし難い嗜好によって、登場する女の子はみんなツルツルのロリだった(ちなみに毛がないというのはヘア解禁以後の現在も制度的に継承されている)訳で、その辺の兼ね合いで美「少女」という語が使われたのかもしれない。だが、所詮エロを主眼としたゲームを美少女などと遠回しな言い方をするべきではないし、第一美少女の出て来ないエロゲーもある以上、この言葉はやはり不正確と言わざるを得ない。従って、僕はエロゲーという呼称に統一するべきだと考える。


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作者:林
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最終更新:Friday, 08-Dec-2006 03:40:47 JST