2022年10月30日 14:18
『ハイパーインフレーション』 ― ヴィクト語文字の解読
この記事では住吉九『ハイパーインフレーション』に登場する架空の言語・ヴィクト語で使用される架空の文字体系を解読する。初めに言っておくが、ヴィクト語が読めたところで『ハイパーインフレーション』という作品を読むにあたって得られるものは特にない。だから普通の読者がこの記事を読む意味はない。『ハイパーインフレーション』が好きで好きでしょうがなくて、隅々まで繰り返し読んでまだ物足りないという読者にとって、作品世界にさらに深く浸るため趣味の範疇で解読してみるのは愉しいことだろう。但しそんな読者はこの記事に書かれている程度のことはとっくにやっているだろうから、やっぱり読む意味はない。
その上で結論だけまとめておくと:
さて解読の方法だが、『ハイパーインフレーション』を読んでいれば、この文字がその場その場でいい加減にデザインされたものではなく、一定の体系をなしているであろうことは大体見当がつく。分かりやすいのは4巻26話の「反撃開始!!」だろうか。AやTの位置から「START COUNTERATTACK!!」と当たりをつけることができる。
そこから3巻20話の手配書の「WANTED」や新聞記事の「GRESHAM」、4巻24話の切手の「POSTAGE」等で読めるパターンを増やして行くと、例えば4巻23話のコレットによる金本位制の説明:
の背景に描かれた該当の文言も、次のように読むことができる:
或いは4巻33話のプロパガンダ切手:
の原語は、英字転記すると以下のようになる:
この頃には、各文字が特定の要素の組み合わせで構成されていることも気付いているだろう。表にまとめると以下のようになる:
なお管見に入る限りQとZは作中でまだ出ていないのだが、収まるべき位置と文字の形を推測するとこうなる(Zに関しては今後ゼニルストン絡みで出てくることを期待している)。
これで文字は一と通り読めるようになった。新聞の紙面や看板に並んだ文字列は恐らく意図的に潰されており、判読できない。ちょっと気になったのは3巻裏表紙にあるコインのデザインで、一万ベルク金貨の表面には「BELLONA DEI GRATIA」という文字が読み取れる。Bellona(ベローナ)はローマ神話の女神だが、硬貨のデザインは明らかに「VICTORIA DEI GRATIA」と刻まれたヴィクトリア朝のソブリン金貨をモデルにしているので、ベローナはヴィクトニア帝国の女王の名なのかも知れない。ちなみに3巻22話によると帝国の首都はベロナポリで、これは「ベローナの都市」といった意味であろう。
また同じコインの裏面には「VICTNIA REGINA FID DEF」とあるが、紙幣その他に現れる「ヴィクトニア」の綴りはVICTONIAなので、これは珍しくミスではないだろうか。
とまあ解読の作業としてはここまでで、思ったよりサクッと完了してしまった。せっかくなのでフォントも作ってみることにする。
無料でオリジナルフォントを作れるサービスは幾つかあるようだが、俺はCalligraphrというのを使った。手順としては:
これでttfおよびotf形式でダウンロードできるようになる。使い道は特にないのであるが、まあ、適当なテクストのヴィクト語版が作れると面白いじゃん?
- ヴィクト語文字は英語のアルファベットに対応している。
- 各文字は単純な幾何学的要素の組み合わせで、規則性が分かれば作中に登場しない2文字についても推測ができる。
- 作中に登場するヴィクト語の文字列は、英単語に転写することができる。作中では日本語で翻訳または説明が添えられている(だからヴィクト語が読めなくても支障はない)。
- 作中に登場しない要素として、ヴィクトニア帝国の女王の名はベローナ(Bellona)かも知れない。
さて解読の方法だが、『ハイパーインフレーション』を読んでいれば、この文字がその場その場でいい加減にデザインされたものではなく、一定の体系をなしているであろうことは大体見当がつく。分かりやすいのは4巻26話の「反撃開始!!」だろうか。AやTの位置から「START COUNTERATTACK!!」と当たりをつけることができる。
そこから3巻20話の手配書の「WANTED」や新聞記事の「GRESHAM」、4巻24話の切手の「POSTAGE」等で読めるパターンを増やして行くと、例えば4巻23話のコレットによる金本位制の説明:
「ベルク札にはこんな文言がある 『この紙幣を持参した方に額面と同じだけの金を支払うことを約束します』」
の背景に描かれた該当の文言も、次のように読むことができる:
PROMISES TO PAY THE BEARER ON DEMAND TEN THOUSAND BELKS IN GOLD
或いは4巻33話のプロパガンダ切手:
「偽造の王にして救世主」「ガブール人よ立ち上がれ!!」
の原語は、英字転記すると以下のようになる:
SAVIORKING OF FAKESTAND UP GABULISH PEOPLE
この頃には、各文字が特定の要素の組み合わせで構成されていることも気付いているだろう。表にまとめると以下のようになる:
なお管見に入る限りQとZは作中でまだ出ていないのだが、収まるべき位置と文字の形を推測するとこうなる(Zに関しては今後ゼニルストン絡みで出てくることを期待している)。
これで文字は一と通り読めるようになった。新聞の紙面や看板に並んだ文字列は恐らく意図的に潰されており、判読できない。ちょっと気になったのは3巻裏表紙にあるコインのデザインで、一万ベルク金貨の表面には「BELLONA DEI GRATIA」という文字が読み取れる。Bellona(ベローナ)はローマ神話の女神だが、硬貨のデザインは明らかに「VICTORIA DEI GRATIA」と刻まれたヴィクトリア朝のソブリン金貨をモデルにしているので、ベローナはヴィクトニア帝国の女王の名なのかも知れない。ちなみに3巻22話によると帝国の首都はベロナポリで、これは「ベローナの都市」といった意味であろう。
また同じコインの裏面には「VICTNIA REGINA FID DEF」とあるが、紙幣その他に現れる「ヴィクトニア」の綴りはVICTONIAなので、これは珍しくミスではないだろうか。
とまあ解読の作業としてはここまでで、思ったよりサクッと完了してしまった。せっかくなのでフォントも作ってみることにする。
無料でオリジナルフォントを作れるサービスは幾つかあるようだが、俺はCalligraphrというのを使った。手順としては:
- アカウントを作成
- [TEMPLATES]でテンプレート(Minimal Englishから英大文字以外を削除したもの)をPNG形式でダウンロード
- テンプレートにヴィクト語文字を貼り付け
- [MY FONTS]でアップロードしてビルド
これでttfおよびotf形式でダウンロードできるようになる。使い道は特にないのであるが、まあ、適当なテクストのヴィクト語版が作れると面白いじゃん?
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